−健康に役立つ立禅(りつぜん)−
MC:このストレス社会の中で健康管理をしていくにあたって、何か効果的な運動のようなものはありますか?

盧山:これは一つの例に過ぎませんが、私の場合は空手を45年間やっておりますが、その中の40年間は静止筋肉、つまり静止した状態で筋肉をずっと鍛えてきました。筋肉というのは、しょっちゅう刺激を与えないと強くならないし、そういう意味で動く筋肉だけでなく静止筋肉にも刺激が必要なのです。色んな面で身体に刺激を与えることが大事だと思います。

宮畑:静止筋肉を刺激するというのはまさにその通りで、私の所に来ている人で先天性小児麻痺の方がおります。車椅子から飛び出すまでがとても大変で、両親がわざわざサンプレイジムまで来て、という人が、立禅(りつぜん)というものをやってみると、見る見るとよくなり、今も30分くらいやっています。座禅というのはご存知だと思いますが、立って行う立禅というものもあって、これは静止筋肉を刺激する効果があるのです。

盧山:立禅というのは、要するに立って静止をして、そして腰を落として、かかとを上げて、これで1時間ぐらいずっと立っているんです。昔我々が子供の頃は体罰があって、かかとの下に画鋲を入れて、先生に「お前立ってろ」って言われる、あれに似ていますね(笑)

宮畑:私は去年と一昨年、気功の勉強に中国に行ったのですが、その時には精神科も含めて、心臓外科とかそれぞれの先生たちが発表するのですが、ほとんどの人が站椿功(たんとうこう)という立禅をやるのです。お医者さんもやるし、患者さんもやるし、ですからこれは身体には凄くいいことが改めてよく分かりました。



盧山:武道の歴史は50年100年というものではなく、それこそ何千年の歴史があるわけです。だからある意味で昔は、色んな面で今以上に医学が、独自の医学が発達していたのです。基本的には人の体験を人に伝える、またその人が工夫を凝らして人に伝えて、もうこれを永遠に、何百年何千年の歴史の中で培ってきたという、いわゆる体験学ですね。だからこれはとても効果があるのです。

もともと武道というのは自分の身体を守るためでした。守るというのは何かというと、まずは病気や怪我からも自分の身体を守らなくてはいけない。外敵からも守らなくてはいけない。そして外敵から守るためには技を学ばなくてはならない、というわけです。そのためにはやはり何よりも、まず身体を元気にさせなくてはいけません。病気にも打ち勝つというか、病気にならない身体を作ることが、一番大事になってくるのです。

だから、この站椿功(たんとうこう)という立禅にしても、体験学として、それこそ昔の何千年前の中国から、人から人に伝わってきた本当の意味で人間が創った遺産、財産だといっても過言じゃないと思います。顔の筋肉にしても、ただニコーっと笑う、そのことによって体の中のいい働きが、身体全体に影響したりします。だから静止筋肉を鍛えるとは、細胞レベルで身体が変わっていくということでもあります。細胞を鍛えるというか、身体のどこを鍛えるじゃなくて、細胞のあり方そのものを鍛えるのです。

数十年間修行してきた結果、細胞レベルでも変化を及ぼしてるんだな、というのは私自身の実感でもあります。だから今年で60歳になるけれども、今まで、本当に大きな大病をしたことはないですね。まあ小さい病気は小出しにしてきましたけれど。おまけに60歳になってもまだまだ人よりも若さを保っていられます。とりあえず60歳になっても若々しくいられるというのはとても素晴らしいことです。武道をやって自分の生命力を高め、そして年をとっても若くいられ、外敵から自分の身を守れる。これは要するに自分の身体で体現しているようなものですね。45年空手をやっても、年を取ってヨボヨボになったような人間
が「俺は空手をやって強くなった」なんて言っても迫力がないですよね。

宮畑:細胞レベルあるいは神経レベルというのは正にそうでしょうね。先程言った先天性小児麻痺の子も、例えば自分で下着も着替えられなかったのが、今はそれがどんどんできて、80キロのスクワットもハーフでできるようになって、しかも今度は勉強したくなって車の免許を取ったし、理科大も受かりました。
−脳そしてイメージの重要性−
福永:私は研究で脳神経を少しかじっているので、大変興味深いお話です。

盧山:空手もやはり脳神経のレベルというのは無視できません。てんかんになる子供たちのあの力はすごいものです。脳にちょっと刺激を与えただけで、大人が何人かかっても手が出ないくらいの力が出たりするのです。私の先生の中村日出夫先生は、今でも95,6歳でお元気なのですが、常に自分のこころを通して行いなさい、突くときも、いわゆる漠然と突いたって、スピードも技も身につかないのであって、常に脳を刺激しなくてはいけないと言われておりました。まずはこころにスピードがなければ、身体に体現はできないということです。

つまり中村先生の空手で、こころを通して全ての行動を行えということは、まずイメージから始まるのです。だから空手をやって汗を流すにしても、たとえば今普通の人が音楽をかけながら、言ってみればハイな精神状態になって、汗を出して、エアロビクスみたいに今日はいい汗を出した、いい稽古だったと言っても、昔ならそういう稽古をやった人に対して「お前ね、汗で空手着を汚すな」という表現をしました。つまり汗というのも必ず目的・意識的な行動の中から出る汗が本物の汗であって、頭をハイにして出した汗は違うと。

私が空手をやっていて、それに気付いたのが40歳ぐらいになった時でした。だから無駄な日にちを20年位、過ごしたとも言えるのですが、昔はそれでいいのです。こういうことは教えてくれないし、自分が悟らなくてはいけない。まあ悟れたことは幸せだなと思いますし、だからあらゆる技の根源というのは徹底的
に心であるし、言ってみれば精神、脳なのですね。脳の刺激なくしては技もスピードも力もでないのです。

福永:そういった意味でウェイトトレーニングにおいても、意識によって筋肉のつき方がかなり変わるというのがありますよね。

宮畑:だから、例えばダンベルを持っても、こうやって筋肉を見ながらやるわけです。初心者の人たちはそれが分からない。ところが見てちゃんとやるのとそうでないのは物凄い差があります。
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