昨今、人々の健康意識の高まりと共に、多種多様な健康食品や健康方法が開発されています。しかし医学的には問題があるものや、健康ブームに乗って登場しては消えていくものも数多い状況です。その中にあって本当に役立つ健康のための指針はどうしたら見つけられるのでしょうか。
そこで今回は、ボディビル界で多数の優勝歴を持ち、日本ボディビル連盟競技力向上委員長、東京ボディビル連盟理事長を歴任、現在は東京学芸大学講師を務めるほか、早稲田実業・慶應高校野球部など数々のスポーツ選手のトレーニング指導をされているトレーニングセンター・サンプレイ会長の宮畑 豊(みやはた ゆたか)先生と、第5回全日本空手道選手権大会優勝など多数の実績を持ち、今や世界の「極真空手」として知られている極真館・館長の盧山 初雄(ろうやま はつお)先生という、最強のカラダづくりのエキスパートである両先生に、病気にならない強いカラダづくりの秘訣をお伺いしました。
−健康への強い気持ちを持つ高齢者たち−
MC:現在(※2008年5月)、特定健診いわゆるメタボリック健診の導入や後期高齢者医療制度の導入など、国の医療福祉の問題がマスコミで大きく取り上げられています。これには少子高齢化の急速な進展に対して、現状の法整備が上手く追いついて行くことが出来ていないという側面がありますが、他方、個人の観点から見れば、これからはまずは本人が簡単には病気にならない健康な体をつくって、生涯現役で、そして国に過度の依存はしないようにする、という姿勢もますます大切なことになってくるように
思えます。
最近は人々の健康意識が高まってきたこともあり、プロ・アマチュアの競技者を目指す人だけではなく、一般の子供からサラリーマンやOL、高齢者の方まで、自ら健康維持や増進のために武道やトレーニングジムに通われているケースも増えているようです。
実際にここ数年で参加者に変化はありましたか?
宮畑:そうですね。私の専門のトレーニングに関しては、体の健康と健康になりたいという気持ちは平行しているということを強く感じております。例えば道を歩いていると、太っている人がいて、何であれだけのお腹になるまで何も対応できないのかな、という人が最近では増えているように見えるのですが、そういう人に限って道路でも色々なものを食べながら歩いたりしているのです。そういう人が世の中に沢山いる中で、私のトレーニングセンターに来ている人の例で言いますと、82歳で心臓手術をしてペースメーカーを付けて、来られたときは非常に元気がなかったのですが、今その方は86歳で若い人と同じようなトレーニングをしています。そのきっかけというのが、せっかくトレーニングしているのだからと、ある雑誌に私が紹介して載せたら、そこから変わりました。ちょっとしたことでしたが、それがその方の気持ちを大きく鼓舞するきっかけとなりました。
もう一人の方は、72歳で要介護で入院していたのですが、生涯これで終わりたくないということで、車椅子で我々のトレーニングセンターへ来られて、それからはたった3年間で要介護が解けて、今78歳ですけれども、世界旅行や日本旅行を楽しむまでになっています。このような方々に接していると健康回復は気持ちによるところが大きいのではないかと思います。おそらく医者に寝ていなさいと言われてそのまま生涯を終える人もいると思いますが、その方の場合はもっと自分は元気でいたい、これで終わりたくない、という気持ちが大変強かったのだと思います。ここ数年で健康になりたいという高齢者の方は確かに多く見られるようになりました。
−介護とウェイトトレーニング−
また私は江戸川大学で介護を学ぶ生徒に教えたりもしているのですが、その中には定年しても自分はまだ元気だから介護の資格を取ろう、という方がおられます。しかし重いものを持ったことがないし、
動かしたこともないため、無理をして腰やひざを痛めてしまって、逆に介護する方がされる側になってしまうというケースがあります。ですから生徒達には、物を持つということに関して、重いものを持ったり動かしたりするための身体の準備の必要性を説明しております。日頃の生活の中で何十キロを持ったりする生活というのはほとんどないことだと思います。だから、ウェイトトレーニングは自分が介護をするための準備と思ってやってもらっております。
−大きく様変わりした空手の参加者−
盧山:我々空手に関しては、参加者層がこの10年20年で完全に様変わりしました。今まで空手のイメージは、強くなりたい、まず喧嘩に強くなりたいという気持ちで、若者達が真っ先に道場に来ていたわけです。ところがその若者達が、今では痛いもの苦しいもの、そういうものは嫌だということで敬遠しはじめています。そしてかわりに、美容や護身目的の女性やお年寄り、あるいは子供達のしつけのためということで、特に子供達が多いですね。どこの空手の道場でもそうです。
若者達について言えば、日本の若者の価値観も随分変わりました。近頃は、強くならなくてもパソコンでも打って簡単にお金儲けができれば、という方向に走っている人が多い印象を受けます。一方外国では、例えば現在のロシアは空手が物凄く強くなっているのですが、ロシアでは今でも男は強くなければ生きていけないという認識が強いのです。
それで日本では、子供にしても自分の意志で通っているわけではなく、親が連れてきてるわけです。親にしてみれば、かつて自分は空手を習いたかったけれど習えなかった、せめて自分の子供には、というケースもありますし、もう一つはこうした世知辛い世の中で子供に対する事故や事件が多発していますが、そうしたなかで強い子供に育てたいという思いがあったりします。あるいは家庭で出来ないしつけを道場で、ということで親が連れてくるわけです。そういう意味で、道場の風景というのは特にこの10年の間にガラリと変わってしまいました。
−女性の進出−
盧山:女性について言えば、特に海外ではその傾向が強いのですが、「男は強いもので、女は弱いものである、男は強く生きなくちゃならないし、女はね」というような言葉は死語になりつつあります。だから空手のルールでもそうですが、男性はもう素手でガンガン叩き合っても、やはり女性はガードをしたり男性とは違うルールを作らなければいけないと我々今までそう思っていたのですが、海外へ行くとそれは差別だと言うわけです。男性がこういうルールでやっているのに、なんで女性は同じルールでやらないのか、となるのです。
これも女性の社会進出が拡大した結果と言えるのかもしれません。ある意味で男性は弱くなり女性が強くなっていることは実感します。
宮畑:お年寄りの話をさせてもらうと、全国で私が教えている人たちで60歳から100歳位までの人は20000人位おります。しかしそうした人たちの中でも男性は非常に少ないのです。100人いるとすると、そのうち90人は女性です。
盧山:女性が強いというのは、女性は子供を産むことができますからね。どんな環境にも適応できるし言ってみれば生命力が強いのです。だから男は強く見えても、やっぱり生命力という意味では女性の方が強いかなと思います。
宮畑:やはり女性の方が努力していますね。健康や美容に対して男性よりもそれを持ち合わせている。70、80歳になっても、そういうものはやはりありますね。